CRE戦略の必要性|企業価値を高めるために「持つリスク」と「持たざるリスク」をどう捉えるか
目次
1. CRE戦略とは
CRE(Corporate Real Estate)戦略は、企業が保有・賃借する不動産を経営資源として位置付け、経営目的(収益性・効率性・成長性)に即して最適化する考え方です。単に所有か賃借かの判断に留まらず、「何を・どこで・どの規模で・どの形態で」保有・活用すべきかを中長期の事業計画と整合させます。
2. 不動産の「持つリスク」と「持たざるリスク」
2-1. 持つリスク:減損と企業価値の毀損
- 減損リスク:市場価値が簿価を下回ると減損損失を計上し、純資産・自己資本比率・信用力が低下。
- 需給変化:オフィス需要の変動・用途転換の遅れにより、稼働率や賃料が想定を下回る可能性。
- 保全コスト:老朽化に伴うCAPEX(大規模修繕・耐震・省エネ投資)がキャッシュフローを圧迫。
- 資本効率の悪化:過大な固定資産がROA/ROICを低下させ、投資家評価に影響。
2-2. 持たざるリスク:機会損失と競争力低下
- 資産価値上昇の取り逃し:成長エリアで価格が上昇しても、保有していないため含み益を享受できない。
- 賃料上昇・更新不安:賃借中心では長期的な賃料上昇や契約更新の不確実性に晒される。
- 遊休資産の不活性:自社遊休地・社宅・寮などを活用せず放置すると、潜在収益機会を逸失。
- ブランディング機会の欠落:旗艦拠点の欠如は採用・営業面の訴求力低下につながる場合がある。
3. 人口減少とエリア格差:価格は上下に二極化
日本は人口減少と都市集中が同時進行し、立地による価格の二極化が進展しています。都心一等地・駅近・高利便は需給が堅調で上昇・高止まりが見込まれる一方、郊外・地方では下落圧力が強まる可能性があります。CREでは、
- 保有すべき資産:収益性・流動性・再投資余地の高い物件をコアとして厚く保有。
- 見直す資産:稼働率・賃料の下押しが続く資産は、縮小・用途転換・共同化・売却で機動的に再配置。
- 将来需要の読み:人口動態・産業集積・交通計画・再開発計画を前提に、10年スパンで最適化。
4. CRE戦略の目的と効果
- 資産の最適配置:本社再編、拠点統廃合、遊休資産の売却・再開発・賃貸化で資産効率を改善。
- 財務体質の強化:売却益・資産圧縮でROA改善、負債削減で財務負担を軽減。
- リスク低減:価格下落や需給変化に耐えるポートフォリオへ入替。
- 企業価値向上:「眠る資産」を「稼ぐ資産」へ転換し、事業成長を下支え。
5. 不動産鑑定士が担う役割
実効性のあるCREは、適正な時価評価・収益分析・市場性診断が出発点です。不動産鑑定士は、
- 保有 vs. 売却(または賃貸化)の損益・キャッシュフロー比較
- 開発・用途転換・再編(共同化/区分化など)の実行可能性評価
- 将来シナリオ(人口・賃料・利回り)の感応度分析
を通じて、取締役会・投資委員会で説明可能な数値根拠を整備し、意思決定を後押しします。
6. まとめ:守りと攻めの両輪
価格下落リスク(減損)を避けつつ、上昇局面では価値を取り込む。その鍵は、「持つリスク」と「持たざるリスク」を同時に見極めるCRE戦略です。人口減少による地域格差を前提に、資産の入替と活用で企業価値を継続的に高めましょう。
FAQ
Q1. 今すぐやるべき最初の一歩は?
全拠点・資産のポートフォリオ棚卸し(面積・用途・稼働・賃料/簿価/時価・修繕計画)と、3シナリオ(ベース/強気/弱気)での感応度分析です。
Q2. 所有と賃借の最適バランスは?
機能重要度・拠点の独自性・代替可能性・財務制約で評価。旗艦/要塞拠点は保有厚め、汎用拠点は賃借中心が基本軸です。
Q3. 遊休資産は売るべき?活用すべき?
収益性(賃貸/開発)、市場性(流動性)、資本効率(ROA/ROIC)で比較。投資回収が見込めない場合は売却等の早期資産入替が有力です。
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