ワンルームマンション投資の実態とリスクを専門家が解説

資産形成や副収入獲得を目的に、「ワンルームマンション投資」が注目を集めています。都心のマンションを購入し、賃料収入を得ることで安定した収益を狙う手法ですが、実際には想定どおりの利回りを確保できないケースも少なくありません。

本記事では、不動産鑑定士の視点から、ワンルームマンション投資の実態と注意すべきリスクについて解説します。


ワンルームマンション投資とは

ワンルームマンション投資とは、主に単身者向けの小規模マンションを1室単位で購入し、賃貸に出すことで家賃収入を得る投資手法です。

メリット

  • 比較的少ない自己資金で始められる
  • 入居需要が安定している(特に都心部)
  • 管理会社に委託すれば手間が少ない

しかし、実際の収支を正しく把握せずに購入すると、想定と現実のギャップが大きくなることがあります。


表面利回りと実質利回りの違い

投資判断でよく用いられる「表面利回り」は、
年間家賃収入 ÷ 購入価格 × 100 で算出されます。

ただし、実際の投資収益を左右するのは「実質利回り」です。以下のような費用を差し引く必要があります。

  • 管理費・修繕積立金
  • 固定資産税・都市計画税
  • 空室期間の家賃損失
  • 管理委託料・保険料
  • ローン金利

これらを考慮すると、実質利回りは表面利回りよりも低くなり、ローンの条件や賃料によっては長期間赤字となることも珍しくありません。


価格と価値の乖離に注意

ワンルームマンション投資では、「販売価格が市場価値を上回っている」ケースが見られます。
販売会社による高い営業経費・広告費が上乗せされていることが一因です。

不動産鑑定の観点からは、

  • 収益価格(家賃収入から見た価値)
  • 取引事例比較による価格

の両面を検討し、価格が適正かどうかを判断することが重要です。


想定外のリスクにも注意

1. 賃料下落・入替リスク

ワンルームマンションの入居者は多くが単身者であり、平均居住年数が短く、入替率が高いのが特徴です。
転勤・結婚・転居などのライフイベントによって入居期間が短くなりやすく、結果として空室期間が発生しやすくなります。
このため、家賃下落や入居募集コストの増加など、収益の安定性が損なわれるリスクがあります。

2. 修繕費負担の増大

築年数の経過に伴う大規模修繕に加え、ワンルームマンションでは入居者の多くが単身者であるため、
入替率が高く、原状回復工事や設備交換の頻度が多くなる傾向にあります。
クロス・床材の張り替え、給湯器やエアコンの更新などが積み重なり、結果として修繕費がかさむケースが少なくありません。

また、築20年を超えると共用部分の大規模修繕などで管理費や修繕積立金が増額されることもあります。
長期的には実質利回りが低下するため、購入時に将来の維持費・修繕費も見込んでおく必要があります。

3. サブリース契約による賃料リスク

販売会社がそのままサブリース業者(転貸業者)となり、オーナーとサブリース契約を締結するケースも多く見られます。
この場合、サブリース賃料が相場よりも低く設定されていることがあり、想定していた収益を得られないリスクがあります。

さらに、契約書上「一定期間の賃料不改定・中途解約不可」「契約解除条項」が設けられていることも多く、
安い賃料で貸してしまっても増額改定や解約ができなかったり、サブリース業者の収支が悪ければ契約を解除されるといった事例も少なくありません。
購入時には、販売会社とサブリース契約の関係性や賃料設定の根拠を十分に確認する必要があります。

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4. 売却時の価格下落

区分所有のワンルームは収益性で価格が決まるため、賃料下落=資産価値下落につながります。
そのため、3のようにサブリース賃料が相場よりも低く設定されている場合も、市場よりも資産価値下落につながります。
加えて、築年数の経過や建物の競争力低下により、売却時には購入時よりも価格が下がる傾向にあります。

また、前述したとおり「販売価格が市場価値を上回っている」状態で購入してしまうと、さらに大きな価格下落につながります。


鑑定士が見る「適正価格」とは

不動産鑑定評価では、収益還元法を用いて「その物件が将来どのくらいの収益を生み出せるか」を基準に価値を算定します。

この評価により、購入価格が合理的かどうかを客観的に判断できます。
感覚的な「都心だから安心」という思い込みではなく、データに基づく適正評価が欠かせません。


まとめ

ワンルームマンション投資は、少額で始められる一方で、入替率の高さや賃料下落、修繕費負担など、注意すべきリスクが多い投資です。
購入前に、不動産鑑定士などの中立的な専門家による収益性評価を受けることで、リスクを最小限に抑えることができます。

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