不動産の査定と鑑定評価の違いとは?目的・費用・使い分けを徹底解説

不動産を売却する際や、相続・税務申告などで評価額を提示する必要があるときによく耳にする「査定」と「鑑定評価」。似たような言葉ですが、実際には役割も法的な効力も大きく異なります。本記事では、それぞれの意味や特徴、利用シーンの違いをわかりやすく解説します。


不動産の「査定」とは?

査定を行うのは誰?

査定は、不動産会社(宅地建物取引業者)が行います。専門資格は不要で、営業活動の一環として実施されるのが一般的です。

査定の根拠と特徴

査定額は、周辺の取引事例、過去の販売実績、現在の市場相場をもとに算出されます。つまり「この物件ならどのくらいの価格で売れる可能性があるか」を示す参考値にすぎません。また、査定方法には明確なルールがなく、不動産会社の販売能力や自社買取の場合は業績や時期によって影響を受けることもあり、査定額に差が出るのもそのためです。

査定にかかる費用と活用場面

多くの場合、査定は無料で受けられます(鑑定業者でないものが有料で査定を行っている場合、鑑定業法に違反し、違法行為の可能性があります)。売却を検討している段階や、相場感を知りたいときに利用するのが一般的です。


不動産の「鑑定評価」とは?

鑑定評価を行う専門家「不動産鑑定士」

鑑定評価は、不動産鑑定士という国家資格を持つ専門家が行います。不動産鑑定士は「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づいて評価を行い、客観的で信頼性の高い価格を提示します。

法的根拠と鑑定評価の効力

鑑定評価は、裁判、相続、税務申告、金融機関の担保評価、公共事業の補償など、公式な証明が必要な場面で効力を発揮します。単なる「目安」ではなく、公的に認められる「適正な価格証明」としての役割を果たします。

鑑定評価の費用と利用シーン

鑑定評価は有料で、物件の規模や用途によりますが、数十万円程度かかるのが一般的です。費用はかかりますが、その分だけ法的・公的に裏付けられた強い効力を持ちます。


査定と鑑定評価の違いをわかりやすく比較

  • 実施者:査定は不動産会社、鑑定評価は不動産鑑定士

  • 法的効力:査定は営業上の目安、鑑定評価は法的効力あり

  • 費用:査定は無料、鑑定評価は数十万円程度

  • 目的:査定は売却価格の参考、鑑定評価は裁判・税務・相続など公式な手続き


どちらを利用すべき?ケース別の選び方

売却を検討している場合

「とりあえず相場を知りたい」「売れる価格の目安を知りたい」といったケースでは、不動産会社の査定で十分です。複数の会社に依頼して比較すると、より現実的な販売価格を把握できます。

相続や税務、裁判に関わる場合

財産分与や相続税の申告、裁判での証拠資料など「公式な根拠」が必要な場合は、鑑定評価が必須です。


まとめ|査定と鑑定評価を正しく使い分けよう

  • 査定=不動産会社による「売却予想額(参考値)」

  • 鑑定評価=不動産鑑定士による「公的に認められる価格証明」

売却の検討段階なら査定で十分ですが、相続や税務、裁判などの場面では鑑定評価が必要です。状況に応じて正しく使い分けることで、不動産の価値を適切に把握できます。